医療データ奮闘記

公衆衛生大学院に入った内科系専門医が医師として培った現場感と大学院で培った統計の知識を交えながら、医療や疫学や統計に関する素朴な疑問や本音をつらつら書いています。

心臓マッサージ(胸骨圧迫)をするべきかどうかで困るのでは? (心肺停止の判断基準)

今日は平和かなーと思っていたが、そう思った日に限って突然心肺停止などが起こるものである1

私は目の前での心肺停止を結構対応しているので、皮肉を込めて「名探偵コナンみたいやな」と言われた事もある。
院外(駅)で1回、院内では5回くらいfirstで急変対応(Dr.callでの対応を除く)をしている。(一般内科の医師としては結構多い方)初めはパニックになることもあったが、回数を重ねるにつれて「自分マニュアル」ができてきて、落ち着いて行動できるようになってくる。逆にそこまで決めておかないと、いつまで経っても心肺停止に対してなんとなく恐怖心が残ってしまう。

複数の経験を経て辿り着いた個人的なポイントとしては、

  • 呼吸確認の際は下顎呼吸は意味ないので、「寝ている時のリズミカルな呼吸と明らかに違う」かどうか
  • 脈の確認は首の上の方(顎を片方ずつ掴む感じ)を触って触れるか否か & そもそも血圧が測れるか否か
  • 意識障害の確認は胸をグリグリしながらどんな反応するかをみる(普段普通に喋る人が、痛み刺激にやっと反応する程度なら胸骨圧迫した方が良い。私が今まで胸骨圧迫をし始めた人はたいてい痛み刺激の確認に反応はしていたが、蘇生後に聞いても心臓マッサージされてた事を全員覚えてない)

院内であれば、

  • とりあえず「おいも」(O2の投与・IV(静脈路)の準備・monitor管理(血圧とSpO2のモニタリング))を指示して、何時に何をしたかの記録をつけながら人を呼ぶ(いずれも悪いことはない)
  • バイタルが落ち着いても、とりあえず心疾患が背後にあるか否かは判断が難しく専門外の人間には最後までrule outが困難なので、わからんかったらバイタルを落ち着けて循環器内科callかどこかのERに送る。

このくらいでパニックにはならなくなる。あとはボスミンの投与間隔などは自分で覚えやすいように覚えておけば良い

以前、論文発表で「心臓マッサージのやり方を学んだ人の中で、50%以下の人しか現場で実践できていない」という発表を聞いた。発表者である救急医は驚いていたが、そんなもんだろうと思う。
非医療者が一番困るのは「この人は本当に心臓が止まっているのかどうか」という判断をどのように下すかではないだろうか。これは研修医くらいでも結構難しい。
よく見るパターンは基本的にパニックになっていて、「多分何かの間違いだろう」と思い、とりあえずなんとなく傍観してしまう。ベテランの看護師さんや誰かが胸骨圧迫(心臓マッサージ)をしだすと、慌てて色々と手伝うことになる。(自分の研修医時代のことでもある)

これが済んで落ち着けば、採血・心電図・心エコー・頭部+胸腹部CT(解離とか疑う)くらいは念仏のようにとっておいても文句は言われない(心肺停止したくらいなんだから、明らかに餅詰めたとか窒息でなければむしろ堂々とここまでしましたと報告したら良いと思う)


  1. 外勤中だった